【寄稿】中小企業は大切な地域資源の一つであり地域貢献の旗振り役!!

地方創生や地域活性化のポイントである「地域資源」は、観光名所や特産品、ブランドだけではありません。中小企業も重要な地域資源の一つです。地域活性化の視点から見た「企業の有効活用とはどういうことなのか」「企業が地域のために何ができるのか」「すぐにでも始められることは何か」などのヒントについて、「近代中小企業」様からお声がけを頂き、ご寄稿させていただく機会を頂戴しました。

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中小企業は大切な地域資源の一つであり地域貢献の旗振り役!!

 【今、企業の存在価値が本当に試されている】

企業とは社会の公器です。そして、経営者に課せられた使命とは、その意味を理解し将来に対する社会的価値の創出と存在価値の確立をどう進めていくのかを、明確なビジョンとして持つことです。

日本には100年以上続く法人が企業規模に関係なく3万3千社も存在しており、それは世界でも類を見ないことですが、自らの営利だけを目的にしている企業は最終的に社会から厳しい判断を仰がれます。しかし、これらの100年企業にはいくつかの共通した考え方があります。当然、企業経営ですから時代を先読みし臨機応変に対応していく必要がありますが、「変わって良い部分」「変わってはいけない部分」が、存在しているのです。
私は、企業経営コンサルタントとして地方創生や地域活性化のサポートを各地で展開する中で、以下の言葉の重要性を再認識しました。

「三方良し。和を以もって貴としとなす。吾唯足るを知る」これこそが、企業のあり方で、社会とのかかわり方の基本であるということです。
まずは、企業が新たに地域貢献に取り組む際の留意点を解説してみましょう。

●経済性よりも社会性
会社の存在価値とは、社会の公器としての役目を果たしているかどうかに尽きます。それは、社会生活における不便な「もの」や「こと」の解消や、将来にむけた「夢」や「希望」を提供することになりますが、事業はいきものですから、よもやすると、自己利益の追求のみに走り始めてしまうことがあります。経済性を第一に考えるのではなく、社会性を第一に考えることが企業の存続と価値の向上には必要です。

●経営者の意識改革
企業とは、地域資源の一つであり、社会的責任を負っていることを再認識してください。
地域資源としての役割は事業にかかる納税や雇用だけではありません。企業が持つノウハウや保有している機械や設備、取引先、様々なスキルを持った社員、また、その家族方も含めて、地域社会に貢献できることはたくさんあります。他者任せで、誰かがやるのを待つのではなく、経営者が率先して意識を変えることで、スタートラインに立つことができます。

身の丈を知り、時間をつくる
「余裕がないので、余裕ができたら貢献する」という経営者は、永遠に行動に移せません。事業経営にも該当しますが、最初から大きな事を計画しても成功する可能性は低いものです。たとえ成功しても継続性がなければ一過性のイベントとなってしまいます。まずは、無理のないことから、そして、身の丈にあったことから着手することが必要です。社会貢献はコストも手間もかかる上、時間も費やされるイメージがありますが、時間をつくることができない経営者は事業においても苦労が絶えません。時間をつくり、社会貢献活動をすることで、さらなるアイデアや人脈が生まれ、本業も上手くいっている経営者も多く存在します。

【地域との連携はできることから始める】 

一般的に「地域社会に携わっている人や組織」でイメージするのは、役所や各種機関、地域団体、町内会や住民などです。しかし、そこには重要な構成要素として民間企業も含まれていることを認識する必要があります。
多くの経営者は「どのように地域とつながればいいのか分からない」「そういうことはやってこなかったから」と発言します。これを機に「できること」から始めてみましょう。

子供たちへ「気付き」を提供
例えば、文部科学省が「土曜日の教育活動推進プロジェクト」として進めている教育プログラムがあります。それは「子供たちの健全な育成を支援する」という観点から、土曜授業(出前授業)を開催して「仕事」や「夢」を持つことなど、新しい「気付き」を自己発見する機会を提供しています。
子供たちに対して、土曜日の豊かな教育環境の実現に向け、地域や企業の協力を得ながら全国での取り組みがなされています。ちなみに 「一般社団法人公益資本主義推進協議会」の会員企業が全国各地で土曜授業を積極的に行っているのですが、筆者が組織運営本部を兼務している関係もあり、同会で実施している事例を以下に紹介します。

事例「土曜授業」
神奈川県横浜市の「ピィスメドレー株式会社(代表取締役社長:岡昌太郎)」の本業は、健康づくりを推進している企業です。
地域の小学校で「仕事とは?」「働くとはどういうこと?」などをテーマに、子供たちにも分かりやすいようにパワーポイントを作成して、大人たちの熱い思いを伝えています。

東京都千代田区の「株式会社FISソリューションズ」の山口勝宏取締役は、本業が情報通信コンサルティング事業なのですが、その分野で子供たちが興味を持つテーマで、同様に多くの夢と希望を持つことの大切を語っています。
この他にも、土曜授業のみならず、職場体験や体験学習、会社見学、工場見学など、企業の独自性を生かした提供企画は数多くあります。これらは、子供たちに多くの気付きを与えることができる上に、家庭に帰った後の保護者との会話の中で企業のイメージアップを図ることにもつながります。

また、参加した子供たちからの感想文やコメントを社員と共有することで、社会性を持った企業に勤めている自信と自覚を醸成することにも役立ちます。

事例「声がけ運動」
全国的に地域のコミュニティが衰退している昨今、子供たちとのコミュニケーションを積極的に図ることを目指し、毎朝、社員たちが「声がけ運動」をしている企業があります。

栃木県宇都宮市川俣に本社がある、中古タイヤアルミホイルなどを幅広く販売している「有限会社アップライジング(代表取締役:齋藤幸一)」では、地域にある2つの小学校の通学路(横断歩道の危険場所等)に社員を配置し、徒歩で通う子供たちに毎朝「おはようございます」「いってらっしゃい」「シンチャオー(ベトナム語でおはようの意味)」と声がけをしています。「シンチャオー」は子供たちへの遊び心です。

ちなみに、同社の声がけ運動は基本的に自由参加なのですが、多い日は本社と支店を併せて10数名ほどが参加しています。驚くべきは、参加者が0名という日がまったくないことです。
中には、ハイタッチしてくれたり、昨日の出来事などを報告してくれたりする子供たちもいます。ときには、社員が髪の毛を切ったことに気付いて指摘をしてくれることもあり、朝の貴重な時間を共に楽しめる環境を創出しています。また、声がけ運動だけではなく、地域のゴミ拾いも積極的に実施しています。
これらの活動が本業に直接つながることはありませんが、地域の将来を担う子供たちが元気に学校へ通う、一日を楽しく過ごすことを、真剣に願っている社員の純粋な気持から継続されています。

【地域貢献を明確に社内外に表現する方法】

企業は地域社会と密接な関係にあるにも関わらず、どのように地域社会に還元をすればいいのかを難しく考えてしまいがちです。そもそも企業は、社会の公器なのですから「健全な状態で存続していること」が立派な存在価値になるわけです。少し視線を変えるだけで、簡単に目で見える地域貢献ができます。

次の①〜⑥案を是非参考にしてください。

①企業が準備する贈答品(お歳暮、お中元、土産)は、地元の特産品や開発商品を利用する
各々の企業が、お付き合いで何らかの贈答品を準備することがあるはずです。それは、有名店の菓子だけでなく、地元の商工会や団体がブランド化を手がけている商品を、積極的に利用することをお勧めします。先方も必ず、その商品について聞いてくると思われるので、様々な話題に発展させる機会を創出することができます。
また、PRにつながると共に、新たな協力者になってもらえる可能性もあります。企業が持つ人脈を地域のために活かす手法の一つです。

  ②食品などのテストマーケティング(試食や試飲)に、積極的に協力する
地方創生の取り組みが全国各地で進んでおり、あらゆる地域で特産品開発やブランド化を推進しています。特に一般消費者向けの商品の場合、試食や試飲、アンケート調査などが重要視されます。人が集まるスペースやイベント会場などで、これを開催し、そこで得た意見などを改良に活かすわけですが、地域の開発支援者側はこのモニター調査のコストや手間に頭を悩ませています。
企業においては社員も一消費者です。企業として積極的にモニターやアンケート調査を引き受けてみてはいかがでしょうか。お昼休みや、内容によっては就業時間内に実施してもいいと思います。地域のために協力するという意識は社員の育成にも役立ちますし、社員同士のコミュニケーションを醸成するきっかけにもなります。

③応接室や来客用打合せスペースに、地元の工芸品などを添える
企業であれば、様々な来客者が自社を訪れます。一般的な応接室には、社長の趣味や思考にそった物品が置かれていることが多いと思います。そこで、テーブルクロスやカーテンを地元の織物にしたり、コップを地元の工芸品にしたりするなど、特別な気遣いを見せましょう。飲み物も通販などで大量購入したものではなく、地元産のお茶やジュースを提供することで、来客者との間で話題にしてPR活動を進め、地域応援企業としてのブランド化を確立します。

商品は、ネクタイ、ネームプレート、カバン、靴下など、何でもOKです。これを機会に地元の工芸品を、企業として探してみてはいかがでしょうか。

④地域の特産物作成やブランド化を推進する団体などに、自社のネットワークや情報、ノウハウを提供する
地方創生に関わる取り組みは実に多岐にわたります。管轄上、情報の中心は役所にあるので、自社の得意とする技術やサービスを取り組みに役立てられないかを相談してみてはいかがでしょうか。筆者も各地の協議会や推進団体のアドバイザーをしていますが、新しいアイデアや活力を注いでいただけることは常にウエルカムです。
既に活動している団体に途中から参加するのは気が引けると考えがちですが、役所の担当者を通して紹介をもらえば比較的簡単に事は運びます。役所も地方創生事業については「KPI」という業績評価指数(成果目標)を持って取り組んでいるので、相談に乗ってくれるはずです。企業の持つノウハウや機械、設備、取引先、人脈を活かすことができれば、これも重要な地域資源の有効活用の事例となります。

⑤道の駅や公共施設の利用を促進して、かつ協力をする
遠方からの来客があったときに「どこで、何を堪能してもらうか」「立ち寄り先として、どこに案内をするか」などの推薦場所をお持ちですか? 美味しいレストランがあるとか、お勧めのお土産はこれだとか、お客様へのおもてなしの一貫として地域内の情報を社員と交換、共有してみてください。 また「対象店舗や施設に不足点があるから薦められない」というケースでは、一消費者として、地域の応援企業として、その店舗にアドバイスや意見を言うことも大切なことです。単なるクレームではなく、改善ポイントをお伝えすることから、お互いのコミュニケーションを取ることができ両者の発展につながります。

⑥社会貢献団体の自販機を自社内に設置する
社会貢献活動などを展開しているNPOやNGOが数多くありますが、昨今、活動に賛同している飲料ベンダーが寄附金つきの自動販売機を設置している事例を見受けます。通常価格で購入するのですが、売上の一部が寄付金として指定団体に寄附される仕組みです。こういうものを利用して社会貢献することもできます。

企業における社会価値創出、そして社員の自信と自覚を養い、企業価値を上げていくためにも「できることから」チャレンジしてみてください。
近代中小企業 2017年3月号 (地方創生の陰と陽 第一弾)寄稿分

【PDF版は下記からどうぞ】

中小企業は大切な地域資源の一つであり、地域貢献の旗振り役

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